介護ロボット 開発の難易度

 以前の記事「ロボット介護の青図」で挙げた、ロボットに代替させたい業務は

おおまかに類別して7つほどになった。

 

 現時点で私の考える限り、その中で最も難易度が低いものは見守りだ。

センサーや画像認識で移動や転倒などの異常などは正確に把握できるようになり

報告が一箇所に集約されるシステムはすでに出来上がりつつあり、その延長線上

には例えば寝たきりのバイタル異常まで察知するレベルまで到達可能に違いない。

 

逆に最も難易度が高いものはというと、食事の提供である。

これに関してはあまりに多岐にわたる作業と個別の対応が要求されるからである。

 

要介護者の運動能力や情緒に直接的に関わる業務

例えば、 移動、衣服の脱着、入浴、排泄など 「行為を物理的にサポートする」

という共通項のあるロボット開発は、技術も共有できるので、核となる技術が発明

されれば、そこからはかなりスピードアップするはずだ。突き詰めれば 認識と

動作制御の問題だ。

また癒し、娯楽などに対するコミュニケーシンロボットやVR型レクリエーション

も現在進行中のものを高齢者むけにブラッシュアップすればよいだけだ。

 

これに対し食事の提供というのは直接関連性のない、多岐にわたる作業の集積に

よってはじめて可能となる。

 献立の作成から始まり、材料の仕入発注、在庫管理、準備、調理、配膳、提供

洗浄、廃棄まで の一連が完結して、これが食事の提供となる。

但し、自力で食事ができない場合の食事介助は上記の「行為を物理的にサポート

する」範疇のものである。

 

またソフトの部分においても健常者の食事と高齢者の食事には非常に大きな相違が

あり、個別対応の複雑さは一般には知られていないが、現在人間が行っている重要

かつ厄介な業務となっている。その具体的内容は後述する。

 

既存の高齢者施設にとっても、当然食事は最大のイベントであり、また最もコスト

の負担が大きいものである。 逆にこれさえ自動化できればその他の業務代替は

後回しになってもよいくらいだ。

 

どんな施設のバランスシートをみても食事にかかわるコスト(光熱費、機械設備の

減価償却を含む)が支出の大半を占めている。無論ダントツで大きいのは人件費だ

が実情は食事コストも半分以上は人件費なのだ。

 

最高難易度の食事提供の自動化が達成されるとすれば、他の業務の自動化は理論上

それよりも早く達成されていなければならない。と言おうかこれが達成されるとす

れば、元々のテーマである「ロボティクス介護ユニット」は、ほぼほぼ実現される

ことになるわけである。

 

というわけで、この最も難易度の高いと予想される食事提供についてさらに考察をすすめていきたいと思っている。

 

 

 

 

介護ロボット 現状の開発手法

 

 

 平成29年7月14日現在 googleでもsafariでも「介護ロボット」で

 検索すると、表示されるサイトはこんな感じになる。

 

   1) 介護ロボットの学術記事

   2) 介護ロボット紹介ー介護ロボット推進事業

   3) 介護ロボットの一覧 - 介護ロボット推進事業

   4) 介護ロボットはどこまで役に立つ? 導入のメリットと今後の課題

   5) 介護ロボットの今後について みんなの介護

   6) 介護ロボットポータルサイト

                 ↓

   と続くわけだが 

  1)は通産省研究機関の発表した論文で公表されたのが2010年と記され

  ている。これがトップにきている意味がわからない。

  

  2)は、かながわ福祉サービス振興会の中の「介護ロボット普及推進事業」

  のサイトで、事業内容の報告書が公開されている。これもわりと大掛かり

  な試験導入の検証報告だが、総括すると「ロボットは介護では時期尚早

  らしい」という内容。平成23年度のもので最後となっている。

 

      3)も同じサイト、4)、5)は介護事業者の話題提供としての関連記事的

  な言及にとどまっている。

 

 6)に関してはポータルサイトというより研究機関の広報サイトだ。

 サイトの管理者は途中から日本ロボット工業会になっており、元々は国立研究

 開発法人 産業技術総合研究所を中心としたコンソーシアムがあり、さらに

 そのなかに設置された広報委員会が監修をしているという。この産総研はまた

 別の国立研究開発法人 日本医療研究開発機構が推進する介護ロボットの開発

 導入促進事業の基準策定と評価を担当をしており、このふたつの国立研究開発

 法人は二人三脚で動いているようだ。

 

 このあまり最先端らしからぬポータルサイトが現状の介護ロボットの開発状況

 をよく物語っているような印象を受ける。

 

  

 平成25年6月に閣議決定された「日本再興戦略」のなかで「ロボット介護

 機器開発5カ年計画の実施」が盛り込まれ、翌年は「ロボット革命実現会議」

 が開催された。要は2020年までに介護ロボットの市場規模を500億に

 するというものだ。この計画に中心的な役割を担うくべく新設されたのが、

 日本医療研究開発機構で、新規開発提案されたロボットの評価・認定などを

 おこなっている。新規開発提案は公募によることが殆どである。

 

  ここで認定 採択されたロボットは自治体などが既存の介護業者に対して

 導入の際交付される助成金の対象となっている。 

 

 大手、ベンチャー、大学研究室を問わず、各々の開発事業者が応募し、審査に

 通れば、製品化されたものは導入促進事業への移行または研究開発費の助成

 など、支援を受ける対象になるのだが、結局は介護現場への導入実績が達成率

 のバロメータとなるわけだ。

 

  製品化された対象となる介護ロボット(機器)は一覧で前述のポータル

 サイトに掲載されている。

     http://robotcare.jp/?page_id=5899

 

 公募で集められたロボット技術の取捨選択、交通整理がどのようにすすめら

 れるかは不明だが、安全基準の規格は一応定められていて(ISO13482) 、

 採用の根拠のひとつになっている。

 

  然しながら、安全性の検証などまともにできるはずもなく、安全性の検証

 は、審査する側よりむしろ審査される側に委ねられ、審査する側はせいぜい

 検証の方法の妥当性を判断する程度にとどまっているのではないかと思う。

 

  なぜか? それは開発段階で実際に要介護の高齢者を実験台にして

 十分なデータやフィードバックを得られないジレンマがあるからである。

 これをやるには相当のリスクがあり、彼らの人的リソースにも入って

 こないのである。スマホを何度も落下させて衝撃耐久性のデータをとる

 ようなわけにはいかないのである。だからまず無難なカテゴリのロボット

 (見守りや癒し、コミュニケーションロボットなど)が必然的に多くなる。

 

   これまでの説明を整理すると次の通り

 

     step 1    閣議決定「日本再興計画」の策定

 

     step 2   ロボット介護機器開発5か年計画の策定

          (経済産業省厚生労働省

 

     step3      実践組織の発足(国立研究開発法人など)

 

     step4     実践組織による介護ロボット技術の公募

 

     step5    開発事業者(企業、大学)による応募と審査

 

     step6   step5で認証された製品及びその他のロボットの

         介護現場への紹介、導入支援(自治体、NPOなど)

 

     step7   介護現場での活用(高齢者施設)  

 

 

    以上 step7 が導入件数と売上金額によって実績となるはずだが、

    まず最初のデータが出ると仮定して、来年2018年の4月くらいに

    公表されることを期待したい。

 

   

    どんな結果が出るかは、現時点ではだれもわからないので、成果や

    費用対効果の話は少し性急かもしれない。

 

    しかしこの国立研究開発法人というのは非常に優秀な人材が集まった

    大規模な組織である。このプロジェクトにおける彼らの人件費と消費

    した時間が介護労働コスト削減にどれだけ貢献するのか、このことは

    介護ロボットの市場規模目標500億円とはまた別のはなしだ。

 

 

    500億が妥当かどうかはわからないが、それなりの売上が確保され

    れば、開発事業者はなんとか回収して事業経営が成り立つであろう。

    但し、介護現場に相応のメリットがなければ、そこに貢献という言葉

    は生まれないし、持続性も危うくなる。 

    

 

    介護ロボットの開発事業者はもちろん目先の利潤を追求しなけれなら

    ないが、そのまえに介護現場をもっと包括的に理解すべきだ。

    介護ロボット IoTのベストミックスが将来的にどのようになるのか

    よく考慮して自らの製品を送り出さなければならない。

 

 

    ここでいう「介護現場」とは何か?

 

    それは 介護事業経営者であり、介護従事者であり、要介護者である

    高齢者とその家族 すべでを指しており、さらに介護エンジニアが

    新しくそこに加わるのだ。

 

    近い将来「介護エンジニア」という職位が登場すると私は予測する。

 

    AV機器が VHS ⇒ レーザーディスク ⇒ DVD ⇒ HDDと

    加速度的に進化していったその数倍のスピードでロボット化が進むのを

    考えると、現在リストアップされている介護ロボットの多くは普及する

    前にお払い箱になる可能性が高い。後発のものが圧倒的に有利なのは

    間違いない。

 

    ただ現状はどの開発業者も今保持している技術をできるだけ早く製品化

    し、その一部でも知的財産として保全できればよいと考えているふしも

    ある。

 

    そのようなことをすべて度外視しても、現状介護事業経営者の立場で

    いえば、たとえ助成金が出ようが、費用対効果はほとんどない、と言

    ってよい。要は少しだけ得するかもしれないのは介護従事者のみで、

    それさえも限定的である。もちろん高齢者にとってタダならうれしい

    ものもあるが、ウン十万もウン百万円も誰が負担するのか?

    

    介護事業経営者が、ロボットが代替労働としてではなく協働的な役割

    にとどまって人件費が削れないのであれば、そのロボットは無償でなけ

    れば何のメリットもないと考えるのはもっともな話だ。

 

    つまり「介護現場」を構成する介護経営者の目線ではすすんではいない

    ようだ。

 

    介護従事者の身体的負担を軽減するのは確かに素晴らしいが、それが 

    介護従事者の離職率の要因になっているのかといえば、低賃金や人間

    関係のほうが圧倒的に影響度が高い。パワーアシスト系ロボットは

    介護従事者むけより要介護者むけしか必要とされなくなることを

    誰かがいち早く予測し、軌道修正すべきだった。

 

    例えば有名な HAL は登場したときのインパクトはあったが、実用化

    伸び悩んでいるうちに約1年前にサイバーダインの株価は暴落し、今も

    1500円のラインで推移している。(因みにIPO初値は8510円)

    rewalk roboticsのような海外の企業でより簡単に装着でき、より低価格

    で市場に出回ればどんなことになるのだろう。

    うわべだけの介護従事者目線だったのが、このような結果を招いたと

    言えなくもない。

 

    癒し系、セラピー系、コミュニケーション系も少しは介護職員の負担

    軽減に寄与するかもしれないが、最優先されるべきは利用する高齢者に

    どのくらいの効果があるかということである。(特に認知症への効果)

    検証データはほぼ試験導入施設からのアンケートで、施設によって

    温度差がある。「表情が明るくなった。」「会話が増えた。」など

    ポジティブなものから「10分ですぐ飽きてしまった。」「すぐ忘れ

    はずが、嫌悪感だけ維持し続けた」というネガティブなものまで意見

    がわかれる。当然スタッフからな完成度も指摘されている。

 

    開発者はある程度会話ができて、かわいらしい外見で少し動ければ

    きっと高齢者に受け入れられるという確信、悪く言えば勝手な思い

    込みのもと商品化するわけだが、まだまだこれからブラッシュアップ

    が必要だ。

 

    ざっと以上のように提供する開発者側の目線と利用する側の介護現場の

    目線は常にずれているのだが、その間に立つ行政機構や自治体はその辺

    はお構いなしである。

 

 

    ロボットが実際に介護労働コストを削減できるレベルまで達したとき

    それを使いこなすオペレーター的業務が必ず発生する。なぜならその

    時にはロボットの動作制御そのものは、すでに問題ではなくシンギュラ

    リティとまでいかなくても十分進化したAIのほうにこそ正しい指示を出

    せる人材が必要となってくるはずだ。

    こればっかりはEXCEL WORDレベルでは無理があるしすぐに理解して

    操れるだけの素養のある人材は介護業界にはいない。

 

    このことは医療業界と比較するとわかりやすい。

    医療機器のIoT化が割合早くからすすんでいるため医療従事者のなかで

    ロボットテクノロジーの受け皿となる人材は多い。心臓外科医が超極細

    の糸で血管を傷つけず迅速に縫合するという人間ではとてもできない

    オペレーションをロボットを使って行っている映像をみたが、この

    ロボットを操作するのに熟練の技が必要であり結局使いこなす人材も

    当面は必要とされるのである。

 

    

    医療でのロボット導入は今後勢いを増し、受け皿のない介護業界は

    後回しになる構図はすでにみえている。

    

    それでも、そのことは気にせず 介護ロボットの開発者たちは当面の

    コンセプトは変えずにすすんでいくのだろう。

 

    

 

 

 

    

 

    

    

 

    

 

    

    

    

 

    

    

 

    

    

    

 

    

 

    

 

    

 

    

 

    

   

 

    

    

 

  

 

  

 

 

 

 

    

 

 

 

  

ロボット介護の青図

 現状の介護従事者の国内総数は170~180万人と推計されている。

 要介護認定者数は約600万人。2025年に介護従事者は約40万人不足すると予測されている。但しこれは介護サービスに直接従事している人数であって間接的に関わっている(例えば食事の提供をおこなう調理スタッフや医療看護、 介護事務など)はカウントされていない。また入居施設や独居の老人以外では 同居の家族の介護労働も発生しているがこれもカウントされない。

 

 要介護者一人あたりにかかる介護労働時間の評価は、重篤度によって個人差がありすぎるので算出が難しいが、業務をセグメント化すれば平均を導き出すのは可能だ。 

 

 たとえば、業態により多少の差異はあるが介護施設の基本業務は下記のような感じだ。

 

   ① 食事の提供

   ② 入浴介助

   ③ 排泄介助

   ④ 見守り

   ⑤ 身体機能維持訓練またはリハビリ

   ⑥ レクリエーション(イベント)

   ⑦ その他

 

  ① に関していえば、食事の提供といっても 献立の作成から材料の発注 準備 調理 配膳 提供 食事介助 など多岐に渡る業務から成る。

 

  ②の入浴介助も重篤度や設備によって一人あたりにかかる時間はやはり違うが平均はとれるだろう。⑦も具体的には話し相手、移動介助、着替え、通院、与薬、家族対応、清掃など多岐に渡る。

 

 これらの基本業務は独居の在宅であれ、大中小どんな規模であれ発生する。 

 介護ロボットが人との協働の段階を経て省力化、最終的にはほぼすべての業務を代替する場合、最も適した施設規模はどれかということを正しく選択しなければならない。 

 

 人間並みになんでもこなすロボットをつくるのはまだだいぶ先のはなしなのでそれぞれの業務はそれぞれ特化した専門のロボットがおこなうことになる。

 一体何種類のロボットで構成されるのか?

現時点で思いつくだけでも10数種のロボットが必要でそれぞれプロトタイプはすでに出現している。

 

 前述の①~⑦の業務で、現状ロボットによる無人化のハードルが一番高いと考えられるのが、食事提供の一切に関わるオペレーションだ。

 献立の作成やレシピから調理アルゴリズムの深層学習にはすぐ道筋がつきそう

だが、物理的に安全である程度美味しい料理が出来上がるためのステップが、複雑で管理項目が多すぎる。もし現状を踏襲するやりかたで開発をすすめたとしたら10年経っても無理だろう。但し、ユーザー側のフォーマットを変更してロボットができうるところの極限まで簡素化できれば、逆に可能ともいえる。

 

献立の作成や発注業務などは確実にAIに移行できるし、最も負担となっている。

食事介助も現状のロボットアームを改良すればで十分代替可能だ。

 

入浴も「やっぱり湯船に浸かりたい」などの欲求を満たすために現在のような機械浴が導入されているが、それでもは結構な重労働である。だが身体を清潔に保つことを最優先にして改良すればロボット化はよりスピードアップする。

 

排泄介助は介護ベッドとトイレタリーの連携が必要になってくるがAIをどのように活用して省力化していくかはまだ検討の段階かどうかもわからない。介護従事者目線よりも利用者目線の改良がまだ主流となっている。

 

見守りはセンサーロボットの開発がそろそろ佳境に入っているのでこれから導入事例は増えてくるだろう。 

 

VRやARを駆使したアミューズメントはすでに商業化されているが、高齢者のレクリエーションむけのソフトウェアは遅かれ早かれ開発される。

 

対話可能なコミュニケーションロボット、癒し系ロボットなども介護職員の労務代替としては結構重宝がられるようになる。

 

ざっとみて現状の段階でも介護ロボットのポテンシャルは意外と侮れないのである。

 

  しかし、これらがいつごろ実用化されるのか?

 これらのロボットをすべて揃えたらいくらかかるのか?

 またそのメンテナンスコストや償却年数がどのくらいになるのか?

 

まだこの疑問に回答できるひとはいないのでひとまずこの問題は横に置いておく。

しかし独居の老人の各家庭すべてに一式を設置するのはあまりに非効率という理屈は誰にでもわかるだろう。いくら人手不足とはいってもロボットの導入コストが係る人件費を上回ってしまえば、それは本末転倒な話だ。

 

介護施設のIoTによる極限までの省力化にはそれぞれの介護ロボットが個別に機能するのではなく、常に連携、連動が求められる。そこには導線の最適化というものが十分に考慮されなければならない。

 

これらのことを踏まえると、既存の介護施設にロボットを導入するのではなくこれから増加する空き家などを再活用をしながら、まったく新しいスタイルの「ロボティクス介護ユニット」を考えていくべきである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

介護業界の未来予想図

 介護業界の未来予想図はおそらくしかるべき研究機関で秀逸なものが描かれているのかもしれない。但しこの時代の2年前のアイデアはすでに陳腐化する可能性もあるし、

現在のものがまた2年後には前提がひっくり返ることもあり得る。

 ここ2、3年はの未来年表なるものがいくつかの異なる機関から提示され話題となってはいるが、これらはあくまで大分類的な予測なので、介護分野にフォーカスすると

団塊の世代後期高齢者になる2025年に介護給付は21兆円になる」とか、「2018年に介護職の大量離脱が起きる」などのコメントにとどまっている。

 

 サービスロボットと産業用ロボットの割合が2020年には同じになり、あらゆる生活の局面に実用化されるというザックリとした予測はいいとしても、その時の介護施設がどのように変化しているかのイメージはまだ見たことも聞いたこともない。

 

 何にせよ今エンジニア達が、IT技術の将来に対する共通したイメージは、エンジニアでさえ仕事が奪われるレベルまで自動化されていく、というものだろうと感じられるのだが、実際それがいつ起こるかは非常に予測がむずかしいと思う。但しあるポイントから相乗的に加速するのは確かなので、介護というITとはかけ離れた領域でも「自動化」

「最適化」が最終的には達成されるのは間違いない。

 

 具体的な介護施設あるいは介護そのものの未来予想イメージの作成に関しては、そこには様々な分野のひとたちが関わることになるのだが、はじめはやはりSF映画のようなアプローチで出来上がったりするだろう。

 なんといっても現状の最先端技術から想像するしかないのだが、2030年の予測を2017年に行うのと1980年に行うのでは当然精度は違うわけで、いまならそこそこイイ線で予測できるはずだ。

 話はそれるが、映画「ブレードランナー」の設定は2019年で、すでに車が垂直に動いているが手動運転であり、アンドロイドに宇宙探査をさせているがそのアンドロイドは人間そっくりのかたちをしている。この頃のSF映画というのは今の世代にとっては突っ込みどころ満載なのだが、そのときは誰もが当たり前に楽しんでいたのである。

 

 誰が予測するにしても、その未来予想図に合わせて開発をすすめていくとなると、映画のように無責任に想像するわけにはいかなくなってくる。そこで誰がどのように未来図を描かなければならないのかという問題になるのだが、シンプルに考えればたった2つの条件を満たした人たちに任せればよいと思う。

それは

  ① 介護の現場を熟知している。

  ② 最新の技術を把握しており、またその技術の将来的な進捗度を予測できる。

 

 この2つの条件を同時に満たしている人たちが議論し、どう活用させるか予測し

それをイメージ化すればイイわけだ。但し、②の人が①の人からヒアリングをして絵を

描くと間違いなく失敗する。

 

例えば、介護業務のなかで排泄介助があるが、優秀なエンジニアが何人か100名くらいの排泄介助を実際体験したうえで、議論すれば排泄介助に対するある程度の着地点をみつけることは可能だ。そこから遡及的に幾つかのプロジェクトを立ち上げれば、介護のなかの「排泄介助」というカテゴリの業務のロボット代替にむけて進捗し始める。

 入浴介助、食事介助、その他の身体介助、見守りやレクリエーションなど他のカテゴリも同様だ。

 

 しかし乍らタダでそんなことをやろうという奇特なエンジニアはまずいない。

そのようなプロセスで開発をすすめようとするIT企業も今のところ存在しない。

あくまで自社の既存商品をベースにロボット化、IoT化を図ろうとしているので

おそらくユニットとしての介護の自動化は個々の商品が出尽くしたあとにやはり

個々の寄せ集めでは使いずらい、機能しないとなってから改めてやり直しする

可能性が高い。

 

 ただし、自動車業界のように国が何兆円も予算をあてればもちろん可能だ。

「3ヶ月で1000万出すからみっちり介護施設でデータを収集しろ」といえば

喜んでやるエンジニアは出てくると思うが、現状ありえない話である。

 

 このような仕事を担えうる人材どこにいるのだろうと考えたとき、ふと思いついたのが、リタイヤまたはセミリタイヤしたシニア世代のエンジニアたちだ。

 

 なんやかんや言っても現状はエンジニア不足なのでエンジニアの高齢化も

すすんでいるようだし、フリーランスが多い職種なのであまり定年に縛られない

とも思うが、さすがに60過ぎてバリバリ現役のプログラマーとかは少ないと

思うし、SEにせよSIにせよ急激な進歩に体がついていかないから同様だと思う。

しかしその急激な変化は十分理解できる能力を保持しているし、紛れもなくエンジニアの視点で介護労働というものを分析できる人材だ。それに自分の親やひいては自分自身

ともまったく他人事でない世界の話でもある。ターゲットが20年後だとすると

まさに自分たちの切実な問題でもある。

 

 ここに人材調達のポテンシャルがあるのではないか?

 

「未来の介護を創造する」といえば、壮大な計画に聞こえるが、趣味の延長線上で

気楽に議論し合えるコミュニティのようなものをまずつくるのがスタートラインに

なると思う。もちろんこの時点で金はかからない。

 

 但しネットのコミュニティがある程度醸成されてくれば、実際に顔を合わせて議論

するのが次のステップである。その議論から納得のいく絵が描けたときにいよいよ

実験の場が実際に必要となり、そこではじめて何らかの費用が発生することになる。

 

 大手企業のラボのような設備など必要はなく、例えば閉店したコンビニを再利用

したものでもなんでもいいと思っている。規模によるが、要は自分たちが勝手好きな

ことができる、趣味のガレージのような、DIYの工房のようなワークショップでいいのではないか? そこはあくまでフリーな立場で参加できる(いわゆる上部組織を持たない=制約を受けない)人の集まりで始めればよいと思う。

 多分その過程のなかで色々な人が出たり入ったりしていくだろうが、それはそれで

いいと思う。要は「発注者は自分たちである。」という概念が一番ちかいだろうか。

 

 但し、運良く進捗していけば、やがて作業は細分化され個々のプロジェクトに

なっていくので、そうなった段階でプロジェクトチームとしてのまとまりは担保されなければならないだろう。 そこにたどり着くまでは、部分的に激しい衝突が起こったとしても基本 楽しく協働できるのではないだろうか。この段階では納期というものが

あってないようなもの(約20年後?)なのでその点のプレッシャーはないといえる。

 

  とにかくこのような人たちを早期に集めて、より具体的で現実味のある

介護の未来予想図を描くことからはじめないと、実現にむけた着手も相当遅れてしまうのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロジェクト推進力の業界間の格差

 オリンピックにしても、地方創生にしてもあらゆる事業は細分化したいくつもの

プロジェクトがあって、このプロジェクトを実践するのは、その人数にかかわらず、

人間なわけで、いわゆる「プロジェクトチーム」というものが組織される。

(全部ひとりでやる場合においても)このプロジェクトチームのパフォーマンスの

集合が事業の成功とか失敗という結果を導きだすのだけれども、サービスロボットの

導入によって日本の課題を解決しようとするときの事業プロジェクトはどのように設定されて、どのようなプロセスでチームが組織化されるのだろう。

 

 介護分野でのロボット技術は、商業ベースでいうとほぼゼロにちかい状況だが、まず、プロジェクトオーナーに挙手してもらい、その中身を吟味して、よろしければ最高で1億円くらいのサポートはしましょう、というのが現状のアプローチのようにみえる。公募によっていくつか役に立ちそうな技術が商品化されることもあるだろうが、ソリューション事業としての意味合いは薄くなってしまう。ヴィジョンがぼやけているから、プロジェクトはランダムになり集合体として課題に大きなインパクトを与えることができない。

 

 どの業界でも課題は明確だが、その課題を解決するための課題が明確になっている

業界とそうでない業界ではスタートの時点ですでに差が開いてしまっている。

 

 また同じようなプロジェクトでも、メンバーを編成する主体が、民間かそれ以外の団体(協議会、自治体、研究機関など)かによってもスタートしてからのスピードに

差が出てくる。

 

 たとえば 人手不足の飲食業界でいえば、モンテローザの大量閉店やマクドナルドの

タッチパネル注文によるオーダーの無人化など、個々の課題解決能力は民間企業のほうがはるかにスピード感があるし、実効性のある選択をしている。

 すき家が24時間営業を断念した先にみえるのは、ロボットによる完全無人化で、

カウンター方式のファーストフードチェーンにおいては早期に実現されうだろう。

 

 民間は自己の企業存続に直接かかわることなので、危機意識もモチベーションも

高くなるのは当然と言えば当然なのだが、いわゆる社会的課題解決における

プロジェクトも同等のレベルで進捗させなければならないと思う。

 

 「産官学が一体となって」とは、常套句なのだが、その中身はロボットマーケット

の将来を見据えた有識者と大手企業経営者による利権者会議と紙一重の印象を

受ける。

 

 その下部にいる現場レベルでの「産・官・学」がどんな動きをしていくのか、

個々には優秀で海外にもひけをとらない人材はまだ日本にも多いと勝手ながら

思っている。 但し これらをうまく融合させてプロジェクトにいのちを吹き込む

ことのできる人材がまだ日本には少ないような気がする。あるいはかつては

多くいたがいまは減ってしまったのかもしれない。

 

 ここ20年くらいのなんとも知れぬ日本の独特なビジネス風土がそういう人材を

創りにくくしてきたように思う。

 

 狭義のプロジェクトマネージャー(PMの有資格者のような)も確かにとても優秀な人たちだ。しかしプロジェクトの推進中に彼らが働きやすい環境を継続的につくってあげる必要がある。この役割を果たすのが広義のプロジェクトマネージャーと私は位置付けて考えていたのだが、ここを軽視してきたために必要以上に苦労したり報われなかったりしたエンジニアも多いのではないかと思った。(後になってサーバントリーダーという言葉があるのを知るが、それに近い概念。しかしプロジェクトリーダーのマネジメント手法ではなく、プロジェクトマネージャーのためのサーバントマネージャーを別途に誂えたほうがよい。そのほうが、プロジェクトマネージャはトップへの説明や説得に時間を割かなくて済む。)

 

 トップランナーであるIT企業はほぼ自前で完結できる。特に大手はその資金力を

背景に優秀な人材を多く抱え込んでいる。これからIoTの導入が加速化していくなかで

受け皿となる業界にもIT企業なみのスキームで働ける人材が必要となる。例えば飲食業界で調理のロボット化を推進するならば調理とSIとAIを同時に理解している人材(サーバントマネージャーがこれにあたる)を確保または養成しないと導入スピードが上がらない。介護業界も農業も同じことだ。

ただ現状は、業界全体でそこに着手しているのは、やはり既にIT技術と接点がある産業に限られている。当然5年後10年後の格差はひどいものになっているだろう。

 

  先に解決しなければならないことが、多分後回しになる。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

課題先進国 日本がロボットで解決すべき問題の理想と現実 (介護業界の例)

最初のロボット展で唱われた「ロボット革命元年の年」から約1年半が経っている。

 

私のクライアントは様々なかたちの高齢者施設の管理者または経営者であったり

するのだが、相変わらず労働力不足に苦しんでいるし、それに起因するコスト増や

サービスクオリティの低下など、状況は改善されていないままきている。

 

介護保険上でもロボットの導入に関わる補助金や加算によって奨励されてはいるが、

現場の当事者の反応は冷ややかだ。まだ全然役に立つというレベルではないし、皆が

忙しい中 PEPPER くんを導入したら助成金を出しますという施策はまさに具の骨頂

だ。現在の介護施設の利用者は戦中戦後の世代で、プロトタイプであるにせよ、アーリ

アダプターとしては無理がある。

 

(多分導入しやすくて効果が見込めるのは見守りのセンサーロボットやVRを活用して

 寝たきりでも散歩の疑似体験ができるサービスなどある程度実用化されている技で、

 既存の施設への落とし込みも比較的容易だ。)

 

現在の高齢者は年金制度と介護保険制度の恩恵を享受できた世代といっていい。

これに続く世代はまず年金が危うくなるし、私の世代に至っては完全アウトなので

ともすればなるべく早めにぽっくりと逝ってしまったほうがむしろよいのかもしれないが、ロボットが身のまわりの世話をしてくれるならば、ハードウェアの初期費用以外は

生活費のみ(最低限食費のみー多分その頃は住居はあまっているし、空き家の再活用は

必須となるだろう。光熱費も自家発電が標準化されているべき。)となる。

 

 個人の在宅介護は無理としても3〜4名のユニット式グループホームでのロボット介護が実現すれば、ベーシックインカムで年金と介護保険の問題が同時に解決するのではないかと思うがどうだろう?

 

 現状スタンダードとされる30〜100名規模の高齢者施設に対して介護ロボットを代替させるのは不可能ではないかもしれないが、正しいコンセプトとも言えないと思う。といって独居の老人家庭にすべてハードウェアを一式設置するのは効率が悪すぎる。 介護の重篤度を揃えて3〜4名のユニットを基本に設計するのが妥当だと思う。

 

 私の世代は年金は完全にアウトの世代だが、逆の意味でセーフだったことがある。

それはスマートフォンの出現などIoTの時代にぎりぎり間に合った世代であること、

現在の50〜60歳は自動運転やAIによる株式投資や仮想通貨、VRなどをなんとか

その気になれば使いこなせる世代で、実際今65歳以上のひとたちはスマホ

持っているもののかなり厳しい。

 

 話が少し横道に逸れたが、この世代が高齢者になる20年後(現在日本の高齢者の

定義は65歳以上とされているが、その頃にはこの定義もさらに引き上げられる

可能性あり)にはロボット介護に対する拒否反応のようなものはおそらく薄いと思う。

 

 とにかく今以上に子や孫に面倒をみてもらうことなど期待できない世代であること

は確かだ。ならば他人様に面倒みてもらえるかというと、これはさらに期待できないので、望む望まないに関わらず、ロボットの世話になったほうがよろしい、というのが

私の考えなのだが、このままでいくと非常にまずい。

 

 スピード感は方向性が正しく定まってはじめてうまれるものだし、方向性はビジョンが明確にならないと定まらない。正しいビジョンが打ち出されるかは別として、ロボットと介護をどう組み合わせて最適化を図るのか、それを提案している話は未だ聞いたことがない。

 

 例えばロジスティクスにおけるピッキング作業は既存の産業用ロボットの技術応用で

代替労働が可能で労働力不足も労働コストも正確性の問題も同時に解決でき、業界の

課題解決に大きく貢献できると期待され、実際進捗している。明確なビジョンが提示

されればおのずとそういった流れになるのだろう。

 

 介護業界では、介護従事者の身体的負担を軽減するために装着型のロボットスーツ

開発され話題を集めたが、これが正しいコンセプトかどうかは疑問符がつく。本来は

介護従事者が身体的負担を被っている仕事を代替させるロボットの開発に注力するほうが効率的だし、省力化にもつながるので施設経営者にとってもありがたいはずだ。

 課題解決とはいいながら、開発者サイドの都合や論理で売り込みをかけ、本質的な

ニーズを満たしていないわけだ。

 「まあとりあえずロボット的なものにまず慣れ親しんでもらう雰囲気づくりからやらないと」と思ってやっているのかもしれないが、ビジネスとして成立するのは容易では

ない。

 

 「課題先進国」というのは少子高齢化をよその国より早く迎えるのが日本だから、まずは日本人の手でソリューションをみつけて実践し、それをあとから海外が改良しながら追随するだろうというところに、日本のビジネスチャンスもある、という絵を描こうとしているのだが、高齢者介護の分野においてはまだまだ迷走しそうな気がしてならない。

 逆に「課題先進国日本」に対してよその国がビジネスチャンスとして捉え、先に

ソリューションをみつけて売り込みに来られ、それをまた利権にして暗躍するごく一部の国内企業がいて荒稼ぎする。そのほうが結果として早かった。ということがないよう

願うばかりである。

 

 

 

 

 

ロボット革命は本当に日本で起きるのか? その3

展示会は非常に盛況だった。取材も多かったようだし、多分主催者側の予想を

上回る反響だったにちがいない。

 でも、ありがちな業界関係者どうしの情報交換の場といおうか、研究機関の

発表会といおうか、肝心の潜在顧客になりうる人たちをどのくらい呼び込めて

いたのかは疑問だ。

 

 私は調理の代替労働としてのロボット技術の可能性を探りに行ったのだが、まったくの肩透かしで、僅かでも関連性のあるブースを探したが、みつからなかった。

 

 海外では、それぞれのお国柄に沿った調理ロボットシステムがほぼ実用化に

近いかたちで、開発されており、それらはyoutube などでみることができる。

(日本でも産業用ロボットアームを改良してラーメン屋を開店した名古屋のエンジニア

がいたけれども、それを知って、行ってみようとしたころにはなくなっていた。)

 

 イギリス、ドイツ、中国 などで3Dフードプリンタを含めた調理関連の

ロボット化の試みがそこそこ進んでいるのを調べたうえで、日本での初めての

大がかりなロボット展をみに行ったので、正直がっかりした。

 主催者の日刊工業新聞の展示会事務局に足を運んで尋ねてみたが、そのあたりの

分野はまだ眼中にないといった感じだった。

 

 産業用ロボットのマーケットシェア的には、日本にはまだアドバンテージがあるようだが、やはり より創造性が求められるサービスロボットでの開発競争では海外に遅れをとっているのだなと痛感した。

 

 但しサービスロボットは産業用ロボットの技術応用の延長線上にあるものであると

すれば、すぐに追いつけるとは思う。

 

 ニーズや課題はシンクタンクでなくとも、現場で苦労している人たちも皆わかっている。要は日々開発される新しい技術を正しく選択し、それを組み合わせて、正しいコンセプトで、正しい段取りでそこに導入する、水先案内人のような人材が多く必要だ。

 

 そういう人材がいれば、あとは各々のパートを担う日本の優秀な技術者たち

がきっといい仕事をするはずだ。 しかし現状はその水先案内人は行政機関であったり

研究機関であったり、自治体であったりしているわけで、「技術や情報や機会は提供できるが、困っている現場のことはよく知らない」という人たちの集団なわけだ。

 分析はできるが、実践するとなると二の足を踏むというジレンマに陥れば、サービス

ロボットの未来はないし、サービスロボットの普及成功なくして 一般のひとが

「ロボット革命」を実感することはできないだろう。