課題先進国 日本がロボットで解決すべき問題の理想と現実 (介護業界の例)

最初のロボット展で唱われた「ロボット革命元年の年」から約1年半が経っている。

 

私のクライアントは様々なかたちの高齢者施設の管理者または経営者であったり

するのだが、相変わらず労働力不足に苦しんでいるし、それに起因するコスト増や

サービスクオリティの低下など、状況は改善されていないままきている。

 

介護保険上でもロボットの導入に関わる補助金や加算によって奨励されてはいるが、

現場の当事者の反応は冷ややかだ。まだ全然役に立つというレベルではないし、皆が

忙しい中 PEPPER くんを導入したら助成金を出しますという施策はまさに具の骨頂

だ。現在の介護施設の利用者は戦中戦後の世代で、プロトタイプであるにせよ、アーリ

アダプターとしては無理がある。

 

(多分導入しやすくて効果が見込めるのは見守りのセンサーロボットやVRを活用して

 寝たきりでも散歩の疑似体験ができるサービスなどある程度実用化されている技で、

 既存の施設への落とし込みも比較的容易だ。)

 

現在の高齢者は年金制度と介護保険制度の恩恵を享受できた世代といっていい。

これに続く世代はまず年金が危うくなるし、私の世代に至っては完全アウトなので

ともすればなるべく早めにぽっくりと逝ってしまったほうがむしろよいのかもしれないが、ロボットが身のまわりの世話をしてくれるならば、ハードウェアの初期費用以外は

生活費のみ(最低限食費のみー多分その頃は住居はあまっているし、空き家の再活用は

必須となるだろう。光熱費も自家発電が標準化されているべき。)となる。

 

 個人の在宅介護は無理としても3〜4名のユニット式グループホームでのロボット介護が実現すれば、ベーシックインカムで年金と介護保険の問題が同時に解決するのではないかと思うがどうだろう?

 

 現状スタンダードとされる30〜100名規模の高齢者施設に対して介護ロボットを代替させるのは不可能ではないかもしれないが、正しいコンセプトとも言えないと思う。といって独居の老人家庭にすべてハードウェアを一式設置するのは効率が悪すぎる。 介護の重篤度を揃えて3〜4名のユニットを基本に設計するのが妥当だと思う。

 

 私の世代は年金は完全にアウトの世代だが、逆の意味でセーフだったことがある。

それはスマートフォンの出現などIoTの時代にぎりぎり間に合った世代であること、

現在の50〜60歳は自動運転やAIによる株式投資や仮想通貨、VRなどをなんとか

その気になれば使いこなせる世代で、実際今65歳以上のひとたちはスマホ

持っているもののかなり厳しい。

 

 話が少し横道に逸れたが、この世代が高齢者になる20年後(現在日本の高齢者の

定義は65歳以上とされているが、その頃にはこの定義もさらに引き上げられる

可能性あり)にはロボット介護に対する拒否反応のようなものはおそらく薄いと思う。

 

 とにかく今以上に子や孫に面倒をみてもらうことなど期待できない世代であること

は確かだ。ならば他人様に面倒みてもらえるかというと、これはさらに期待できないので、望む望まないに関わらず、ロボットの世話になったほうがよろしい、というのが

私の考えなのだが、このままでいくと非常にまずい。

 

 スピード感は方向性が正しく定まってはじめてうまれるものだし、方向性はビジョンが明確にならないと定まらない。正しいビジョンが打ち出されるかは別として、ロボットと介護をどう組み合わせて最適化を図るのか、それを提案している話は未だ聞いたことがない。

 

 例えばロジスティクスにおけるピッキング作業は既存の産業用ロボットの技術応用で

代替労働が可能で労働力不足も労働コストも正確性の問題も同時に解決でき、業界の

課題解決に大きく貢献できると期待され、実際進捗している。明確なビジョンが提示

されればおのずとそういった流れになるのだろう。

 

 介護業界では、介護従事者の身体的負担を軽減するために装着型のロボットスーツ

開発され話題を集めたが、これが正しいコンセプトかどうかは疑問符がつく。本来は

介護従事者が身体的負担を被っている仕事を代替させるロボットの開発に注力するほうが効率的だし、省力化にもつながるので施設経営者にとってもありがたいはずだ。

 課題解決とはいいながら、開発者サイドの都合や論理で売り込みをかけ、本質的な

ニーズを満たしていないわけだ。

 「まあとりあえずロボット的なものにまず慣れ親しんでもらう雰囲気づくりからやらないと」と思ってやっているのかもしれないが、ビジネスとして成立するのは容易では

ない。

 

 「課題先進国」というのは少子高齢化をよその国より早く迎えるのが日本だから、まずは日本人の手でソリューションをみつけて実践し、それをあとから海外が改良しながら追随するだろうというところに、日本のビジネスチャンスもある、という絵を描こうとしているのだが、高齢者介護の分野においてはまだまだ迷走しそうな気がしてならない。

 逆に「課題先進国日本」に対してよその国がビジネスチャンスとして捉え、先に

ソリューションをみつけて売り込みに来られ、それをまた利権にして暗躍するごく一部の国内企業がいて荒稼ぎする。そのほうが結果として早かった。ということがないよう

願うばかりである。