プロジェクト推進力の業界間の格差

 オリンピックにしても、地方創生にしてもあらゆる事業は細分化したいくつもの

プロジェクトがあって、このプロジェクトを実践するのは、その人数にかかわらず、

人間なわけで、いわゆる「プロジェクトチーム」というものが組織される。

(全部ひとりでやる場合においても)このプロジェクトチームのパフォーマンスの

集合が事業の成功とか失敗という結果を導きだすのだけれども、サービスロボットの

導入によって日本の課題を解決しようとするときの事業プロジェクトはどのように設定されて、どのようなプロセスでチームが組織化されるのだろう。

 

 介護分野でのロボット技術は、商業ベースでいうとほぼゼロにちかい状況だが、まず、プロジェクトオーナーに挙手してもらい、その中身を吟味して、よろしければ最高で1億円くらいのサポートはしましょう、というのが現状のアプローチのようにみえる。公募によっていくつか役に立ちそうな技術が商品化されることもあるだろうが、ソリューション事業としての意味合いは薄くなってしまう。ヴィジョンがぼやけているから、プロジェクトはランダムになり集合体として課題に大きなインパクトを与えることができない。

 

 どの業界でも課題は明確だが、その課題を解決するための課題が明確になっている

業界とそうでない業界ではスタートの時点ですでに差が開いてしまっている。

 

 また同じようなプロジェクトでも、メンバーを編成する主体が、民間かそれ以外の団体(協議会、自治体、研究機関など)かによってもスタートしてからのスピードに

差が出てくる。

 

 たとえば 人手不足の飲食業界でいえば、モンテローザの大量閉店やマクドナルドの

タッチパネル注文によるオーダーの無人化など、個々の課題解決能力は民間企業のほうがはるかにスピード感があるし、実効性のある選択をしている。

 すき家が24時間営業を断念した先にみえるのは、ロボットによる完全無人化で、

カウンター方式のファーストフードチェーンにおいては早期に実現されうだろう。

 

 民間は自己の企業存続に直接かかわることなので、危機意識もモチベーションも

高くなるのは当然と言えば当然なのだが、いわゆる社会的課題解決における

プロジェクトも同等のレベルで進捗させなければならないと思う。

 

 「産官学が一体となって」とは、常套句なのだが、その中身はロボットマーケット

の将来を見据えた有識者と大手企業経営者による利権者会議と紙一重の印象を

受ける。

 

 その下部にいる現場レベルでの「産・官・学」がどんな動きをしていくのか、

個々には優秀で海外にもひけをとらない人材はまだ日本にも多いと勝手ながら

思っている。 但し これらをうまく融合させてプロジェクトにいのちを吹き込む

ことのできる人材がまだ日本には少ないような気がする。あるいはかつては

多くいたがいまは減ってしまったのかもしれない。

 

 ここ20年くらいのなんとも知れぬ日本の独特なビジネス風土がそういう人材を

創りにくくしてきたように思う。

 

 狭義のプロジェクトマネージャー(PMの有資格者のような)も確かにとても優秀な人たちだ。しかしプロジェクトの推進中に彼らが働きやすい環境を継続的につくってあげる必要がある。この役割を果たすのが広義のプロジェクトマネージャーと私は位置付けて考えていたのだが、ここを軽視してきたために必要以上に苦労したり報われなかったりしたエンジニアも多いのではないかと思った。(後になってサーバントリーダーという言葉があるのを知るが、それに近い概念。しかしプロジェクトリーダーのマネジメント手法ではなく、プロジェクトマネージャーのためのサーバントマネージャーを別途に誂えたほうがよい。そのほうが、プロジェクトマネージャはトップへの説明や説得に時間を割かなくて済む。)

 

 トップランナーであるIT企業はほぼ自前で完結できる。特に大手はその資金力を

背景に優秀な人材を多く抱え込んでいる。これからIoTの導入が加速化していくなかで

受け皿となる業界にもIT企業なみのスキームで働ける人材が必要となる。例えば飲食業界で調理のロボット化を推進するならば調理とSIとAIを同時に理解している人材(サーバントマネージャーがこれにあたる)を確保または養成しないと導入スピードが上がらない。介護業界も農業も同じことだ。

ただ現状は、業界全体でそこに着手しているのは、やはり既にIT技術と接点がある産業に限られている。当然5年後10年後の格差はひどいものになっているだろう。

 

  先に解決しなければならないことが、多分後回しになる。