ロボット介護の青図

 現状の介護従事者の国内総数は170~180万人と推計されている。

 要介護認定者数は約600万人。2025年に介護従事者は約40万人不足すると予測されている。但しこれは介護サービスに直接従事している人数であって間接的に関わっている(例えば食事の提供をおこなう調理スタッフや医療看護、 介護事務など)はカウントされていない。また入居施設や独居の老人以外では 同居の家族の介護労働も発生しているがこれもカウントされない。

 

 要介護者一人あたりにかかる介護労働時間の評価は、重篤度によって個人差がありすぎるので算出が難しいが、業務をセグメント化すれば平均を導き出すのは可能だ。 

 

 たとえば、業態により多少の差異はあるが介護施設の基本業務は下記のような感じだ。

 

   ① 食事の提供

   ② 入浴介助

   ③ 排泄介助

   ④ 見守り

   ⑤ 身体機能維持訓練またはリハビリ

   ⑥ レクリエーション(イベント)

   ⑦ その他

 

  ① に関していえば、食事の提供といっても 献立の作成から材料の発注 準備 調理 配膳 提供 食事介助 など多岐に渡る業務から成る。

 

  ②の入浴介助も重篤度や設備によって一人あたりにかかる時間はやはり違うが平均はとれるだろう。⑦も具体的には話し相手、移動介助、着替え、通院、与薬、家族対応、清掃など多岐に渡る。

 

 これらの基本業務は独居の在宅であれ、大中小どんな規模であれ発生する。 

 介護ロボットが人との協働の段階を経て省力化、最終的にはほぼすべての業務を代替する場合、最も適した施設規模はどれかということを正しく選択しなければならない。 

 

 人間並みになんでもこなすロボットをつくるのはまだだいぶ先のはなしなのでそれぞれの業務はそれぞれ特化した専門のロボットがおこなうことになる。

 一体何種類のロボットで構成されるのか?

現時点で思いつくだけでも10数種のロボットが必要でそれぞれプロトタイプはすでに出現している。

 

 前述の①~⑦の業務で、現状ロボットによる無人化のハードルが一番高いと考えられるのが、食事提供の一切に関わるオペレーションだ。

 献立の作成やレシピから調理アルゴリズムの深層学習にはすぐ道筋がつきそう

だが、物理的に安全である程度美味しい料理が出来上がるためのステップが、複雑で管理項目が多すぎる。もし現状を踏襲するやりかたで開発をすすめたとしたら10年経っても無理だろう。但し、ユーザー側のフォーマットを変更してロボットができうるところの極限まで簡素化できれば、逆に可能ともいえる。

 

献立の作成や発注業務などは確実にAIに移行できるし、最も負担となっている。

食事介助も現状のロボットアームを改良すればで十分代替可能だ。

 

入浴も「やっぱり湯船に浸かりたい」などの欲求を満たすために現在のような機械浴が導入されているが、それでもは結構な重労働である。だが身体を清潔に保つことを最優先にして改良すればロボット化はよりスピードアップする。

 

排泄介助は介護ベッドとトイレタリーの連携が必要になってくるがAIをどのように活用して省力化していくかはまだ検討の段階かどうかもわからない。介護従事者目線よりも利用者目線の改良がまだ主流となっている。

 

見守りはセンサーロボットの開発がそろそろ佳境に入っているのでこれから導入事例は増えてくるだろう。 

 

VRやARを駆使したアミューズメントはすでに商業化されているが、高齢者のレクリエーションむけのソフトウェアは遅かれ早かれ開発される。

 

対話可能なコミュニケーションロボット、癒し系ロボットなども介護職員の労務代替としては結構重宝がられるようになる。

 

ざっとみて現状の段階でも介護ロボットのポテンシャルは意外と侮れないのである。

 

  しかし、これらがいつごろ実用化されるのか?

 これらのロボットをすべて揃えたらいくらかかるのか?

 またそのメンテナンスコストや償却年数がどのくらいになるのか?

 

まだこの疑問に回答できるひとはいないのでひとまずこの問題は横に置いておく。

しかし独居の老人の各家庭すべてに一式を設置するのはあまりに非効率という理屈は誰にでもわかるだろう。いくら人手不足とはいってもロボットの導入コストが係る人件費を上回ってしまえば、それは本末転倒な話だ。

 

介護施設のIoTによる極限までの省力化にはそれぞれの介護ロボットが個別に機能するのではなく、常に連携、連動が求められる。そこには導線の最適化というものが十分に考慮されなければならない。

 

これらのことを踏まえると、既存の介護施設にロボットを導入するのではなくこれから増加する空き家などを再活用をしながら、まったく新しいスタイルの「ロボティクス介護ユニット」を考えていくべきである。