介護ロボット 現状の開発手法

 

 

 平成29年7月14日現在 googleでもsafariでも「介護ロボット」で

 検索すると、表示されるサイトはこんな感じになる。

 

   1) 介護ロボットの学術記事

   2) 介護ロボット紹介ー介護ロボット推進事業

   3) 介護ロボットの一覧 - 介護ロボット推進事業

   4) 介護ロボットはどこまで役に立つ? 導入のメリットと今後の課題

   5) 介護ロボットの今後について みんなの介護

   6) 介護ロボットポータルサイト

                 ↓

   と続くわけだが 

  1)は通産省研究機関の発表した論文で公表されたのが2010年と記され

  ている。これがトップにきている意味がわからない。

  

  2)は、かながわ福祉サービス振興会の中の「介護ロボット普及推進事業」

  のサイトで、事業内容の報告書が公開されている。これもわりと大掛かり

  な試験導入の検証報告だが、総括すると「ロボットは介護では時期尚早

  らしい」という内容。平成23年度のもので最後となっている。

 

      3)も同じサイト、4)、5)は介護事業者の話題提供としての関連記事的

  な言及にとどまっている。

 

 6)に関してはポータルサイトというより研究機関の広報サイトだ。

 サイトの管理者は途中から日本ロボット工業会になっており、元々は国立研究

 開発法人 産業技術総合研究所を中心としたコンソーシアムがあり、さらに

 そのなかに設置された広報委員会が監修をしているという。この産総研はまた

 別の国立研究開発法人 日本医療研究開発機構が推進する介護ロボットの開発

 導入促進事業の基準策定と評価を担当をしており、このふたつの国立研究開発

 法人は二人三脚で動いているようだ。

 

 このあまり最先端らしからぬポータルサイトが現状の介護ロボットの開発状況

 をよく物語っているような印象を受ける。

 

  

 平成25年6月に閣議決定された「日本再興戦略」のなかで「ロボット介護

 機器開発5カ年計画の実施」が盛り込まれ、翌年は「ロボット革命実現会議」

 が開催された。要は2020年までに介護ロボットの市場規模を500億に

 するというものだ。この計画に中心的な役割を担うくべく新設されたのが、

 日本医療研究開発機構で、新規開発提案されたロボットの評価・認定などを

 おこなっている。新規開発提案は公募によることが殆どである。

 

  ここで認定 採択されたロボットは自治体などが既存の介護業者に対して

 導入の際交付される助成金の対象となっている。 

 

 大手、ベンチャー、大学研究室を問わず、各々の開発事業者が応募し、審査に

 通れば、製品化されたものは導入促進事業への移行または研究開発費の助成

 など、支援を受ける対象になるのだが、結局は介護現場への導入実績が達成率

 のバロメータとなるわけだ。

 

  製品化された対象となる介護ロボット(機器)は一覧で前述のポータル

 サイトに掲載されている。

     http://robotcare.jp/?page_id=5899

 

 公募で集められたロボット技術の取捨選択、交通整理がどのようにすすめら

 れるかは不明だが、安全基準の規格は一応定められていて(ISO13482) 、

 採用の根拠のひとつになっている。

 

  然しながら、安全性の検証などまともにできるはずもなく、安全性の検証

 は、審査する側よりむしろ審査される側に委ねられ、審査する側はせいぜい

 検証の方法の妥当性を判断する程度にとどまっているのではないかと思う。

 

  なぜか? それは開発段階で実際に要介護の高齢者を実験台にして

 十分なデータやフィードバックを得られないジレンマがあるからである。

 これをやるには相当のリスクがあり、彼らの人的リソースにも入って

 こないのである。スマホを何度も落下させて衝撃耐久性のデータをとる

 ようなわけにはいかないのである。だからまず無難なカテゴリのロボット

 (見守りや癒し、コミュニケーションロボットなど)が必然的に多くなる。

 

   これまでの説明を整理すると次の通り

 

     step 1    閣議決定「日本再興計画」の策定

 

     step 2   ロボット介護機器開発5か年計画の策定

          (経済産業省厚生労働省

 

     step3      実践組織の発足(国立研究開発法人など)

 

     step4     実践組織による介護ロボット技術の公募

 

     step5    開発事業者(企業、大学)による応募と審査

 

     step6   step5で認証された製品及びその他のロボットの

         介護現場への紹介、導入支援(自治体、NPOなど)

 

     step7   介護現場での活用(高齢者施設)  

 

 

    以上 step7 が導入件数と売上金額によって実績となるはずだが、

    まず最初のデータが出ると仮定して、来年2018年の4月くらいに

    公表されることを期待したい。

 

   

    どんな結果が出るかは、現時点ではだれもわからないので、成果や

    費用対効果の話は少し性急かもしれない。

 

    しかしこの国立研究開発法人というのは非常に優秀な人材が集まった

    大規模な組織である。このプロジェクトにおける彼らの人件費と消費

    した時間が介護労働コスト削減にどれだけ貢献するのか、このことは

    介護ロボットの市場規模目標500億円とはまた別のはなしだ。

 

 

    500億が妥当かどうかはわからないが、それなりの売上が確保され

    れば、開発事業者はなんとか回収して事業経営が成り立つであろう。

    但し、介護現場に相応のメリットがなければ、そこに貢献という言葉

    は生まれないし、持続性も危うくなる。 

    

 

    介護ロボットの開発事業者はもちろん目先の利潤を追求しなけれなら

    ないが、そのまえに介護現場をもっと包括的に理解すべきだ。

    介護ロボット IoTのベストミックスが将来的にどのようになるのか

    よく考慮して自らの製品を送り出さなければならない。

 

 

    ここでいう「介護現場」とは何か?

 

    それは 介護事業経営者であり、介護従事者であり、要介護者である

    高齢者とその家族 すべでを指しており、さらに介護エンジニアが

    新しくそこに加わるのだ。

 

    近い将来「介護エンジニア」という職位が登場すると私は予測する。

 

    AV機器が VHS ⇒ レーザーディスク ⇒ DVD ⇒ HDDと

    加速度的に進化していったその数倍のスピードでロボット化が進むのを

    考えると、現在リストアップされている介護ロボットの多くは普及する

    前にお払い箱になる可能性が高い。後発のものが圧倒的に有利なのは

    間違いない。

 

    ただ現状はどの開発業者も今保持している技術をできるだけ早く製品化

    し、その一部でも知的財産として保全できればよいと考えているふしも

    ある。

 

    そのようなことをすべて度外視しても、現状介護事業経営者の立場で

    いえば、たとえ助成金が出ようが、費用対効果はほとんどない、と言

    ってよい。要は少しだけ得するかもしれないのは介護従事者のみで、

    それさえも限定的である。もちろん高齢者にとってタダならうれしい

    ものもあるが、ウン十万もウン百万円も誰が負担するのか?

    

    介護事業経営者が、ロボットが代替労働としてではなく協働的な役割

    にとどまって人件費が削れないのであれば、そのロボットは無償でなけ

    れば何のメリットもないと考えるのはもっともな話だ。

 

    つまり「介護現場」を構成する介護経営者の目線ではすすんではいない

    ようだ。

 

    介護従事者の身体的負担を軽減するのは確かに素晴らしいが、それが 

    介護従事者の離職率の要因になっているのかといえば、低賃金や人間

    関係のほうが圧倒的に影響度が高い。パワーアシスト系ロボットは

    介護従事者むけより要介護者むけしか必要とされなくなることを

    誰かがいち早く予測し、軌道修正すべきだった。

 

    例えば有名な HAL は登場したときのインパクトはあったが、実用化

    伸び悩んでいるうちに約1年前にサイバーダインの株価は暴落し、今も

    1500円のラインで推移している。(因みにIPO初値は8510円)

    rewalk roboticsのような海外の企業でより簡単に装着でき、より低価格

    で市場に出回ればどんなことになるのだろう。

    うわべだけの介護従事者目線だったのが、このような結果を招いたと

    言えなくもない。

 

    癒し系、セラピー系、コミュニケーション系も少しは介護職員の負担

    軽減に寄与するかもしれないが、最優先されるべきは利用する高齢者に

    どのくらいの効果があるかということである。(特に認知症への効果)

    検証データはほぼ試験導入施設からのアンケートで、施設によって

    温度差がある。「表情が明るくなった。」「会話が増えた。」など

    ポジティブなものから「10分ですぐ飽きてしまった。」「すぐ忘れ

    はずが、嫌悪感だけ維持し続けた」というネガティブなものまで意見

    がわかれる。当然スタッフからな完成度も指摘されている。

 

    開発者はある程度会話ができて、かわいらしい外見で少し動ければ

    きっと高齢者に受け入れられるという確信、悪く言えば勝手な思い

    込みのもと商品化するわけだが、まだまだこれからブラッシュアップ

    が必要だ。

 

    ざっと以上のように提供する開発者側の目線と利用する側の介護現場の

    目線は常にずれているのだが、その間に立つ行政機構や自治体はその辺

    はお構いなしである。

 

 

    ロボットが実際に介護労働コストを削減できるレベルまで達したとき

    それを使いこなすオペレーター的業務が必ず発生する。なぜならその

    時にはロボットの動作制御そのものは、すでに問題ではなくシンギュラ

    リティとまでいかなくても十分進化したAIのほうにこそ正しい指示を出

    せる人材が必要となってくるはずだ。

    こればっかりはEXCEL WORDレベルでは無理があるしすぐに理解して

    操れるだけの素養のある人材は介護業界にはいない。

 

    このことは医療業界と比較するとわかりやすい。

    医療機器のIoT化が割合早くからすすんでいるため医療従事者のなかで

    ロボットテクノロジーの受け皿となる人材は多い。心臓外科医が超極細

    の糸で血管を傷つけず迅速に縫合するという人間ではとてもできない

    オペレーションをロボットを使って行っている映像をみたが、この

    ロボットを操作するのに熟練の技が必要であり結局使いこなす人材も

    当面は必要とされるのである。

 

    

    医療でのロボット導入は今後勢いを増し、受け皿のない介護業界は

    後回しになる構図はすでにみえている。

    

    それでも、そのことは気にせず 介護ロボットの開発者たちは当面の

    コンセプトは変えずにすすんでいくのだろう。