ロボットによる食事提供

  まずここでは「人間との協働」は前提としない。

もちろん、完全自動化までの過程のなかで人間の介入は不可欠だが、

段階的に介入度は低くなり、最終的には厨房にはほとんど生身の人間が

入らなくて済むようにしたいわけだ。

 

 そしてもうひとつの前提は「食事提供」とは単に調理だけを自動化するわけ

ではなく、それに関わる一切の業務を自動化することである。

 

 もし限られた献立を調理のみ行うロボットならば、すでに開発され始めている。

但しそれらにしてもまだかなり初歩的で優劣の違いはせいぜい作れる料理の

レパートリーの多少によるものだ。

 

  世界中にrobot chef 的なものは結構ある。 イギリスのmoley社のPVや

中国でのカフェテリアで導入されているロボット(鍋振りマシーンともいえる)

また日本でもロボットがつくるラーメン店などは youtubeで見ることができる。

 

 


These robotic arms put a five-star chef in your kitchen

 

  これらの発想は割合早くからあって、これから現在に至るまでかなり進捗して

もおかしくはないのだが、実際はどれも二の足を踏んでいる。

 

 理由は中途半端なレベルでは結局人間の補完的作業がどうしても不可欠で、

実際の労務(コスト)の削減に至らず、ビジネスとしてはまだ成立しないためだ。

 

 ロボットラーメン屋はあまり長続きせず、その他のロボットシェフもエンタメ

の域を出ない使われ方にとどまっている。その典型は昨年ハウステンボス

オープンした「Robot 変なレストラン」だ。

 


ハウステンボス、変なレストラン=テーマは200年後、ロボシェフが腕前披露

 

 


Amazing Robot Chef

 

 

 

10年前の技術からあまり進捗していないのがよくわかる。

 

但し、10年前からもっとこの領域で本腰を入れていたならば、大手牛丼チェーン

またカウンター式のファストフードチェーンの深刻な人員不足の解消にある程度

貢献できていただろう。

 

 「食事とロボット」の現状はこんな感じだが、ここ最近の機械学習の進捗の

度合いといおうか活発化といおうか、によりさらにレベルアップしたものの

期待が高まるわけだが、忘れてはいけないもうひとつの前提は

 

 高齢者にむけて」のものであること  である。

 

自動化されるべき作業にはこの点がついてまわるのだが、すべて特殊なわけでは

なく、むしろベースはごく普通のところからつくられる。

 

 

 

   1) 献立の作成

  

        一年365日朝昼晩の食事をカロリーや栄養素や食材のバランス、季節感

  和洋中のバランス、厨房設備や調理能力などそして費用コストに至るまで

  すべて考慮に入れて構成されたものの作成がまず必要とされるわけだが、

  現在これをやっているのが 「栄養士」といわれる人たちである。

 

  

   ”良い献立” とはなかなか評価がむずかしいのだが、上記に挙げたことが

  しっかり網羅されていれば概ね ”よい献立” といってよいのではないか。

 

   しかし実際 献立の優劣はつくる栄養士の技量をよく反映しているもの

  である。一度出来上がった献立が検証され、指摘をうけ、都度ブラッシュアップ 

  していくので時の経過とともに完成度があがっていくはずなのだが、意外と 

  そうならないのが実情だ。

 

   栄養士のなかで「管理」がつく「管理栄養士」となると何やら偉くなった

  印象をうけるが、これは資格の難易度だけの問題で、よい献立を作成すること

  の技量とはなんの関係はない。 こつこつ実直にお勉強した結果にすぎない。

 

   特別養護老人ホーム と呼ばれる比較的安価で利用出来る入居施設では

  この管理栄養士の設置が義務づけられている。この「管理」がつかない

  普通の栄養士ではダメなのだ。 無論 献立をつくるだけが栄養士の業務

  ではないが、逆に人員不足で純粋な栄養士としての業務だけを行える施設

  は稀といってよいのが実情だ。

 

   管理栄養士1名分の人件費は結構バカにならない。栄養士の仕事だけ

  させておくのはもったいないのである。

 

 

   説明がまわりくどくなったが、要するに「栄養士ってそこまで必要か?」

  ということである。

 

   基本だれであれ、(栄養士でなくても)献立は作れる。また色々網羅して

  構成するにはうん万円からうん十万円する栄養ソフトの操作さえできれば、

  できてしまう。

 

   

   現段階でも AI による献立作成は十分可能だ。むしろ人間がつくる献立より

  完成度の高いものが提供され、人件費も節約できる。

 

   因みに特別養護老人ホームは全国で約7000あり、栄養士1名あたりの

  総人件費を400万円として約280億円の介護保険支出の削減になる計算で

  これに老人保健施設や経費老人ホームなどが加われば軽く300億は削減

  できることになる。

 

 

   そのかわり7000人の栄養士が職を失うわけだが、こればっかりは時流

  と言わざるを得ない。

 

   献立の作成の AI による自動化 はすぐに可能だとしても、その先にある

  「ロボット調理」に最適な献立の作成 は別物と考えたほうがよい。

 

    人間並みのアンドロイドに調理をさせるというなら話は別だが、どんなに

  イノベーションが進んだとしても当面は 「機械調理に AI が加担する」方式

  を前提として、献立が作成されなければならない。 これでは既存の献立

  データが参考にならない。 という理由から殆どゼロベースで考えたほうが

  よいのだが、だからといってそれが大問題かというとそんなことはない。

 

    例えば、どんなかたちであれ、カレーライスくらいは大丈夫でしょう?

  というはなしです。 但し人間が調理する前提の料理からはかなり限定される

  ことにはなるが、料理そのものが無限に創造できるものなのでその点の心配は

  あまりない。

 

 

   いずれにせよ、「献立作成の自動化」のハードルは比較的高くはない。